2022年の11月に、「日本におけるエスペラント受容」(https://subsite.icu.ac.jp/iacs/symposium/post-56.html)という講演を聞きました。(その時の日記。『自転車で日本へ行く!』https://kotobanobenkyo.seesaa.net/article/494250606.html)
その時に、エリザ・オジェシュコヴァの『マルタ』という小説のことを知り、読んでみようと思いました。
エスペラント訳はここ↓でダウンロードできます。エスペラントを作ったザメンホフが訳したものです。
https://www.gutenberg.org/ebooks/61860
それで読み始めたのですが、難しい。エスペラントは覚えるのが簡単だと言われていますが、私にとっては違うようです。私は言語学習に向いていないのかもしれません。言語学習に費やした膨大な時間を他のことに使っていたら、私は何かを成し遂げることができたかもしれません(←いや、それはないだろう)。
それで、早々に投げ出してすっかり忘れていました。
昨年の夏の終わり頃に思い出して、また読んでみることにしました。
ロシア語訳を見つけたので(https://librebook.me/marta)、それと比べながら読んでいくことにします。エスペラントだけで読むより、ロシア語訳を見ながら読む方が、私には理解しやすいのです。
ポーランド語の原文もインターネット上で見ることができます。
https://wolnelektury.pl/media/book/pdf/orzeszkowa-marta.pdf
この小説『マルタ』には、かつては日本語訳がありました。翻訳本が出版されただけではなく、日本で映画化もされたのでした。
『寡婦マルタ』とその受容
https://www2.sal.tohoku.ac.jp/~gothit/historio/marta.html
『マルタ』を読んでみて思いましたが(といってもまだ二割くらい)、これ、十代の頃に読んでおきたかったとつくづく思いました。若い頃に読んでいたら、私は自分の人生についてもっと真剣に考えるようになっていたかもしれません(←もはや手遅れ)。
さて、この小説の中に、私が常々考えていることが書かれていました。
エスペラント訳
— La lasta instruantino de mia filino, fraŭlino Dupont, instruis tre bone, kaj Jadvinjo faris ĉe ŝi grandajn progresojn. Sed mia edzo opiniis kaj ankaŭ min konvinkis pri tio, ke estas ne tute bone de nia flanko, ke ni donas al fremdlandulino la eblon labori, dum ĉirkaŭ ni troviĝas tiom multe da estimindaj lokaj virinoj, kiuj tiel penege serĉas laboron kaj tiel malfacile ĝin trovas.
ロシア語訳
— Прежняя учительница моей дочери, мадемуазель Дюпон, преподавала очень хорошо, и Ядзя делала большие успехи. Но мой муж считает — он и меня в этом убедил, — что не очень-то хорошо с нашей стороны давать работу иностранке, когда столько полек, достойнейших женщин, ищут работы и с трудом ее находят.
この小説の主人公マルタは、四歳の娘を抱えた未亡人で、生きるために仕事を探します。長い事待ってやっと紹介された、フランス語の家庭教師の仕事。訪れた家で、生徒の母親が上のように言ったのです。
以前の教師はデュポン嬢(おそらくフランス人なのだと思われる)で、とてもよく教えてくれていたのだけど、仕事探しに苦労しているポーランド人女性がたくさんいるのに、外国人に仕事を与えるというのはあまりよくないことなのではないか、と夫が言うので、私もそう思うようになった、というわけです。それでポーランド人であるマルタに来てもらうことにしたということらしいのです。
この家の主人の意見に、私は賛成なのです。国内の失業者がいなくなって、それでも足りない時には外国人に頼ればいい。頼らずにすめばもっといい。
言語学習に関して言うと、入門、初級の段階では、自分と母語が同じ人から習うのが効率がいいと思います。読解については、中級上級でも母語が同じ先生に見てもらうのがいいんじゃないかなと思います。この小説の中に出てくるデュポン嬢は、外国人だけどとても教え方の上手な先生だったようですが。

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