2025年01月27日

「パンツ」について考える

ゴーゴリ『死せる魂』の未完の第二巻を読んでいます。

テンチェートニコフという若い地主がいます。彼は自分で畑の世話をやってみたこともあるのですがうまくいかず、いずれは大著をものにするのだと思いつつも何も書き進めることができていません。

彼の領地から十キロほど行ったところにある村に、ある将軍が住んでいて、その将軍の娘がちょっと独特な魅力を持つ女性でした。テンチェートニコフは恋の始まりを感じてうきうきするのですが、将軍と仲違いして交流を絶ってしまいます。なんでも、将軍に「Ты」で呼ばれるのが我慢できなかったのだそうで(将軍の方が明らかに年上なんだから、тыでいいんじゃないか、と私は思いましたが、そのあたりの加減がよくわかりません)。

それであの娘さんに会うという楽しみを失ったテンチェートニコフは、自堕落な日々を送るようになります。その生活のだらしなさを描写したなかに、こういう一文がありました。

Панталоны заходили даже в гостиную.


はて? パンタロンで客間にいるのは悪いことかな? 「パンタロン」という言葉で私の頭に浮かんだのは、しっかりした布でできたおしゃれな形のズボンだったので。

しかし、ロシア語の先生によると、ここの「пантароны」は「трусы」みたいなものなのだそうです。「パンツ」?

あとで平井肇訳の該当する箇所を見てみたら「股引」とありました。なるほど!

それから「трусы」は「パンツ」だけど、「трусы」は「臆病者」の複数形だなと思いました。

つまり、

Трусы покупают трусы.

「臆病者たちがパンツを買う。」

Трусы покупают трусы.

「パンツがパンツを買う。」

となるわけです。

我ながら面白いことを考えついたと思ったのですが、発表する場がないので、ここに書き記しておきます。でも冷静になってよく見てみると、そんなに面白くもなかった……。

「股引」といえば、昔学校で百人一首を習った時、特に男子たちは「ももしきや〜」で始まる歌が気に入っていたみたいで、男の子たちが「ももひきや〜」と言い換えて読んで楽しんでいたのを覚えています。

「教えて!goo」に興味深い書き込みがありました。

パロディー版「百人一首」
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/2101298.html

こういうのを見聞きしたら、すぐに元の歌も思い出して楽しめるようになりたいものですが、昔覚えたはずなのにすっかり忘れてしまいました。

最近は「ズボン」のことを「パンツ」と呼ぶことがあるようです。私は子供の頃に「パンツ」は下着のことであると覚えてしまったので、自分のはくズボンを「パンツ」と呼ぶのはちょっと恥ずかしいような気がしてしまいます。

イギリスでは「pants」は下着のことを指すと聞いたことがあります。ということは「パンツ」をズボンの意味で使うのはアメリカ式ということなんでしょうか。

衣服の名称というのはとても身近なものなのに、私はいまだによくわかっていなかったりします。たとえば、私は「кофта」が何なのかよくわかりません。画像検索で「кофта」を見てみても、これは「свитер」とは違うのだろうかと疑問に思ったりします。

「толстовка」というのは、パーカーのことだと私は長いこと思っていたのですが、フードがついていなくてもスウェット生地でできていたら「толстовка」と呼ばれるらしいということに最近気づきました。すると、日本でいうところの「トレーナー」は「толстовка」なのかな? そして「トレーナー」は和製英語なんですね。

Yahoo! 知恵袋
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10103763130

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posted by ごー at 00:45| Comment(0) | ロシア語 | 更新情報をチェックする

2025年01月17日

「うさぎ」について考える その二

『「うさぎ」について考える その一』(https://kotobanobenkyo.seesaa.net/article/506144925.html)に、エスペラントの「kuniklo」という言葉が「うさぎ」を意味するのだということを書きました。

このような動画を見つけました。

Легкое чтение на эсперанто. Лиса и заяц / Vulpo kaj leporo. Для начинающих


ロシア語でエスペラントが学べるという、私にとっては一石二鳥な動画です。

最近知ったのですが、「一石二鳥」という四字熟語は、日本独自のものではなく、中国から来たものでもなく、英語の「To kill two birds with one stone.」を日本語に訳したものなのだそうです。訳した人、すごいなあ! すっきりと、そして過不足なく訳されています。

ロシア語で「一石二鳥」に該当するのは、

одним ударом (убить) двух зайцев. 一撃でうさぎ二羽(を殺す)


ポルトガル語では、

matar dois coelhos de uma cajadada. 杖の一撃でうさぎ二羽を殺す


となっています。うさぎも鳥も気の毒です……。

上の動画で「leporo」という単語が出てきて、ロシア語では「заяц」となっています。

「leporo」も「うさぎ」なんだ……。

エスペラントの辞書で確認してみると、「leporo」は「野うさぎ」、「kuniklo」は「家うさぎ」となっていました。






ということは、「заяц」は「野うさぎ」なのか?と思いきや、辞書で「кролик」のところを見ると「(アナ)ウサギ」とあり、「дикий кролик」が「野ウサギ」、「домашний кролик」が「飼いウサギ」となっています。






アナウサギ、ノウサギの画像をいろいろ見てみましたが、私にはみんな「うさぎ」にしか見えません。

調べてみたところ、アナウサギは地下に穴を掘って暮らしていて、食用、毛皮用、愛玩用として飼育されているうさぎは、アナウサギが品種改良されたものだとのことです。

「Смешарики」の「Крош」は「кролик」。



「Ну, погоди!」のうさぎは「заяц」。



「заяц」には「無賃乗客」という意味もあって(←なんで?)、「ехать зайцем」で「ただ乗り(キセル)をする」という意味になります。

ピューマのメッシ(https://www.youtube.com/@Iampuma)、チーターのゲルダ(https://www.youtube.com/@Iamcheetah)の動画を見ていると、サーシャとマーシャがメッシとゲルダに「Зайка!」とか「Зай!」と呼びかけていたりして、百歩譲ってメッシとゲルダは猫かもしれないけど、うさちゃん(зайкаはзаяцの愛称)と呼ぶなんで面白いなと思っていたのですが、子供や女性に対する優しい呼びかけの言葉として「зайка」が使われるらしいです。

英語だと、「rabbit」「bunny」「hare」とありますが、「rabbit」が「飼いうさぎ」(つまり穴うさぎ?)で、「hare」が「野うさぎ」。「bunny」は「rabbit」の幼児語だそうです。

↓「rabbit」の一例。






↓「bunny」の一例。






ポルトガル語の「野うさぎ」は「a lebre」。エスペラントの「leporo」とたぶん語源は一緒なのだと思われます(ラテン語から)。

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posted by ごー at 04:47| Comment(0) | 勉強全般 | 更新情報をチェックする

2025年01月05日

読書記録 Eliza Orzeszkowa『Marta』

Привет! Saluton! 遅読なごーです!😃

私が読んだのはロシア語訳
https://librebook.me/marta/

それからエスペラント訳
https://www.gutenberg.org/ebooks/61860

2022年の秋に読み始めたものの途中で投げ出してしまい、2023年の夏からまた読み始めて、やっと読み終わりました。いつものことですが、一冊読むのに(ロシア語訳とエスペラント訳を読んだのだから、二冊といってもいいのかな?)時間かかりすぎです。もっと集中して読書できるようになりたいです。

19世紀の外国の話なので、どういうものなのかよくわからない事物も多くて解読するのが大変でしたが、大変だけれど楽しかったです。

作者の名前が、ポーランド語ではEliza Orzeszkowa、ロシア語ではЭлиза Ожешко、エスペラント訳の表紙にはEliza Orzeszkoと書かれています。ロシア語ではЭлиза Ожешкова、Элиза Оржешкоという表記もあるみたいなんですが。どうしてこんなにいろいろな書き表し方があるのでしょうか。詳しい人がいらしたら教えていただきたいです。

フランス語訳表紙。






英語訳表紙。






この小説は、かつて日本でよく読まれていたそうで、映画も作られたようです。
↓こちらのページに詳しく書かれています。

『寡婦マルタ』とその受容(東北大学の後藤斉名誉教授のページ)
https://www2.sal.tohoku.ac.jp/~gothit/historio/marta.html

舞台は19世紀後半のポーランド、ワルシャワ。幼い娘を抱えた若い未亡人マルタが、生活のために職探しをします。しかしなかなかいい仕事が見つかりません。

マルタは大事に育てられて、結婚相手もいい人だったので、とてもまともで誇り高い女性だったのです。しかし……。

この小説は岩波文庫にあってもいいくらいのものだと思います。どなたかポーランド語わかる方に訳していただきたいものです。みんな読んだ方がいいです。しかし、心の弱っている時には読まない方がいいです。

さて、最後まで「マルタ」を読むと、レフ・トルストイの「アンナ・カレーニナ」のことも思い出してしまうわけですが(二人とも黒髪の美人だし)、「マルタ」が発表されたのが1873年、「アンナ・カレーニナ」の執筆が始められたのも1873年だそうです。不思議な偶然の一致。アンナ・カレーニナはあんな衣食住に恵まれた生活をしていたのに、何をやっているのだと怒りがわいてきます。しかし、考えようによっては、数年間とはいえ、好きな人とお互いに尊敬、尊重し合いながら生活していたマルタの方が幸せだったのかもしれません。う〜ん、でもやっぱり二人とも気の毒だ……。

マルタだって、栄養状態がよければ↓こんな感じだったかもしれません。いや、もっと優しい顔つきかもしれない。

Portrait of an Unknown Woman
イヴァン・クラムスコイ - [1], パブリック・ドメイン, リンクによる



『マルタ』の作者エリザ・オジェシュコヴァは、1905年、ノーベル文学賞候補になりました。この時、レフ・トルストイも候補になっています(トルストイは第一回の1901年から1906年まで毎年候補になっていました)。この1905年にノーベル文学賞を受賞したのはポーランドの作家ヘンリク・シェンキェヴィチでした。

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posted by ごー at 22:20| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする