「親子丼」「親子丼」という料理があります。鶏肉を煮て卵でとじたものをごはんの上にのせたものです。
この「親子丼」という名称、私は親子が仲良くわけあって食べることができるから「親子丼」というのだと思っていました。だって、味が刺激的すぎないし、固すぎないし、子供でも食べられます。
二十歳くらいまで、私はそう思っていました。
二十歳くらいの頃のある日、私は雑誌を読んでいました。その雑誌の北海道特集のページに、鮭とイクラをのせた丼物の写真が掲載されていて、そこには「北海道では鮭とイクラの丼もののことも『親子丼』と呼びます」というようなことが書かれていました。
なるほど、鮭と鮭の卵で「親子丼」か……。なかなか洒落た名前だなあ……。
そこではっと思い出したのです。では、私が今まで「親子丼」と呼んでいた食べ物の「親子」とは……。
それ以来、私は親子丼を食べたいとは思わなくなりました。
「Leitão」以前の私はポルトガル語の子供向けの絵本をよく読んでいました(←ポルトガル語の先生のところにたくさんあったので)。
ある絵本に、お城で催された王様の宴会の様子が描かれていました。いろんなごちそうがあります。そのなかに「leitão」という言葉がありました。
その時使っていた英葡辞書の「leitão」のところには「sucking pig」と書かれていました。なるほど豚の赤ちゃんのことかと私は納得し、あらためて絵本を見ると、宴会の場面の食卓には子豚の丸焼きが描かれていました。そして「leitão」は「porco(豚)」という言葉とは少しも似ていないのを、私は不思議に思いました。
それから数年後。ポルトガルでは、母親の乳しか口にしたことのない子豚を美味としている、ということを知りました。
そこで私は初めて気づいたのです。
「leitão」という言葉は「leite(乳)」から来ているということを……。
ポルトガルの大きめのスーパーマーケットでは、子豚の丸焼きが売られていたりするのですが、私はそれを見ても「おいしそう」とはとても思えませんでした。ああいうのを見て「おいしそう」と思える人は食べればいいんじゃないかなと思います。私は食べませんけど。
「пулярка」ゴーゴリの『死せる魂』を読んでいたら「пул
ярка」という言葉が出てきました。
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知らない単語だったので、研究社露和辞典で調べてみます。
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(卵巣を抜いて)食用に肥らせた牝鶏
卵巣を抜く!? どうやって? 痛くないの?
美味を追求するためには何でもやってしまう人間をおそろしいと思いました。
そこで私は「フォアグラ」のことを思い出します。
二十歳くらいの時、駅前の洋菓子店が昼食でフランス料理を出すことになったと聞き、母と一緒に出かけました。私はそこで「フォアグラ」を初めて食べました。「世界三大珍味」の一つとして名前だけは知っていましたが、実際に食べるのは初めてでした。
なるほど、鶏レバーよりさらに濃厚な感じなんだな、世界三大珍味の一つと言われるだけのことはある、と私は感心したものです。
後にフォアグラがどのようにして作られるのかを知り、私は金輪際フォアグラを食べないことにしようと決心したのでした。
「赤飯」赤飯のことを「おこわ」とも言います。
幼少時。祖母に「おばあちゃん、どうしてお赤飯のことをおこわというの?」と尋ねたら、祖母は「お赤飯はこわいからだよ」と答えました。
お赤飯が「こわい」? 私の頭の中ははてなマークでいっぱいになりました。そして「こわい」には「かたい」という意味もあるのだと教えてもらいました。
今辞書を見てみると、「怖い/恐い」と「強い」は同語源だと書かれていました。私は日本語についても知らないことばかりだなあと、あらためて気づかされた次第です。
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https://kotobanobenkyo.seesaa.net/article/503342703.htmlよく考えると(よく考えなくても?)こわい食べ物の名前、それからこわい食べ物について