2023年08月19日

胡蝶の夢、羊の夢

高校では「漢文」の授業がありました。「国語」という枠組みの中で中国の古典を学ぶというのは不思議だなあと、今も昔も思っています。中国の古典、そしてそれを日本語として読めるように工夫した「漢文」は、日本語をより深く知るために欠かせないものだということなのでしょう。

漢文の授業では、杜甫(712ー770)や李白(701ー762)の詩、「論語」などを読んでいたかと思いますが、これらは、古文の授業で読んだ「源氏物語」や「枕草子」、「平家物語」や「徒然草」などよりもずっと古いわけで、日本の高校生はすごいものを読んでいるなあと感心します。

ちょっと疑問があるのですが、現代の中国語を知っている人から見ると、漢文の授業で読んでいたものは「古い」と感じられるのでしょうか。それから、現代の中国語の文章に返り点をつけたら、日本語しか知らない人でも内容が理解できたりするのでしょうか?

高校の漢文の授業はちんぷんかんぷんで、あまり面白いとは思えなかったのですが(先生、ごめんなさい!)、卒業後に『多久の漢文王国』という本を読んだらとても面白くて、高校の漢文の授業もちゃんと聞いておけばよかったと反省したものです。






魯迅『非攻』

昨年の12月に魯迅の短編小説『非攻』のエスペラント訳『Antimilitisto』を読みました。

『Antimilitisto』
https://www.ilei.info/novajxoj/Antimilitisto.pdf

ILEI(Internacia Ligo de Esperantaj Instruistoj)という団体が、毎年12月15日、エスペラント創始者であるザメンホフの誕生日(「本の日」とも呼ばれる)に、みんなで同じ作品を読みましょうという呼びかけを行なっていて、昨年提案された作品二つのうちの一つが魯迅の『非攻』でした。

私一人ではたぶん読めなかっただろうと思いますが、サークルの人たちと一緒だったのでなんとか読み通しました。

『非攻』の主人公は中国の思想家、墨子。ある国の王様が別の国に攻め入るつもりであると聞いた墨子が、王様を諌めに出かけていくという話です。

墨子が生きていたのは、紀元前470頃から紀元前390頃とされています。紀元前です。イエス・キリストよりも前です。その時代にこういう考えの人がいたとは!






それなのに、人間は21世紀になってもまだドンパチやっているわけで、なんだかなあと思います。

「ウィキブックス」というサイトに墨子の『非攻』がありました。

高等学校古典B/漢文/非攻. (2023年2月25日11:29). Wikibooks. 2023年8月18日20:32 https://ja.wikibooks.org/w/index.php?title=%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E5%8F%A4%E5%85%B8B/%E6%BC%A2%E6%96%87/%E9%9D%9E%E6%94%BB&oldid=223874 にて閲覧.

胡蝶の夢

YouTubeで道教についての動画を見ました。

道教といえば、昔『タオのプーさん』という本を読んだことを覚えています。とても面白かったことは覚えていますが、内容は忘れています。また読みたい。








この動画の中で「胡蝶の夢」という話が取り上げられています。

高等学校古典B/漢文/胡蝶之夢. (2022年11月26日11:14). Wikibooks. 2023年8月18日20:59 https://ja.wikibooks.org/w/index.php?title=%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E5%8F%A4%E5%85%B8B/%E6%BC%A2%E6%96%87/%E8%83%A1%E8%9D%B6%E4%B9%8B%E5%A4%A2&oldid=215419 にて閲覧.

なんとなく「般若心経」に通じるところがあるような……。

ここで私は、ロシアのアニメ「Смешарики」の『Бабочка(蝶)』という話を思い出しました。



雨の降る夜、ヘラジカ(лось)のラシャーシュ(Лосяш)はクマのカパーティチ(Копатыч。カパーティチは農業をやっていて、土を掘って耕す「копать」のでこの名がついているのだと思われます)の家でお茶をご馳走になっていました。何か考えこんでいる様子のラシャーシュが話し始めます。

「ラジオ番組があったんだ。我々はみんな、過去、生きていた、ただ、そのことを覚えていないんだって。興味を持ったから、ラジオ局に手紙を送った。そしたら自分は前世で蝶だったということがわかった」

「いつも心の中では、自分は蝶なんだと感じていた。こんなふうに(ヘラジカの姿に)生まれたことが不可解だった」

翌日から、ラシャーシュは蝶になりきります。フクロウ(сова)のサヴーニャ(Совунья)やヒツジ(баран)のバラーシュ(Бараш)はそんなラシャーシュを見て呆気にとられてしまいます。

友人たちはこの状況をなんとかしなければいけないと思い、ラシャーシュを説得しようとします。でもラシャーシュは「自分はヘラジカの姿だけれど、心は蝶なのだ。長年、ヘラジカのふりをしていたけれど、もう嘘をつくことはできない!」と言って聞く耳を持ちません。

結局のところ、花の蜜ではおなかがいっぱいにならないラシャーシュはヘラジカに戻り、友人たちが用意した食べ物をがつがつ食べるのでした。食べるのに夢中なラシャーシュに向かってバラーシュが言います。

「今日はトラになった夢を見た。しましまで強くて、恐ろしいトラ」

ぎょっとしたラシャーシュにバラーシュは言います。

Не боись! Тигры бабочек не едят.


「Не бойся.」と「Не боись.」の微妙な違いが私には難しいところです。

не боись. (2022, март 27). Викисловарь. Retrieved 22:41, август 18, 2023 from https://ru.wiktionary.org/w/index.php?title=%D0%BD%D0%B5_%D0%B1%D0%BE%D0%B8%D1%81%D1%8C&oldid=12235792.


羊の夢

羊のバラーシュはトラになった夢を見ました。私は羊になった夢を見ていました。

幼児の頃の私は、夢うつつの中で次のような光景をよく見ていました。

気がつくと、私は原っぱにいます。下は草。ひんやりして、ちょっとちくちくする時もあります。隣にはおかあさんがいます。おかあさんは白くてふわふわです。上を見ると空がどこまでも広がっていて、おかあさんに似た白いふわふわが浮かんでいます。

ある時、私は「おかあさんから離れて遠くへ行ったら、何があるのだろう」と思いました。おかあさんから離れてとことこ歩いていきます。行った先にはとげとげのついた針金が張り巡らされていて、そこから先には行けないようになっていました。私はがっかりして、おかあさんのところに戻ります。

そんな夢を何度も見ていました。いつの間にか見なくなりましたが。

私は羊になった夢を見たのでしょうか。

あるいは羊が人間になった夢を見ているのでしょうか。

posted by ごー at 08:20| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

2023年08月12日

私が勘違いしていたこと

わりと長く生きているような気がしますが、世の中には私の知らないことばかりで毎日驚いています。

「内田洋行」

「内田洋行」という会社があります。この社名について私は、創業者が「うちだようこう」さん、あるいは「うちだひろゆき」さんなのだろうと思い込んでいました。「マツモトキヨシ」が創業者の名前を社名にしているのと同じように。

昨日、インターネットを見ていた時に、中国には「◯◯洋行」という社名の会社があることを知りました。

えっ! では「内田洋行」はもしかして……。

「内田洋行の歴史」というページを見てみました。
https://www.uchida.co.jp/company/corporate/history.html

『洋行』とは、中国語で“外国人の店”という意味をもちますが、それと同時に、当時は多くの人々の挑戦意欲をかきたて、未知の領域に挑む、“フロンティアの気概”がイメージされることばでした。


と書かれています。「ようこう」さん、「ひろゆき」さんのことではなかったのか……。創業者は内田小太郎氏だとのことです。

「チーズタッカルビ」

四、五年前くらいのことでしょうか、「チーズタッカルビ」という韓国料理がはやっているというのをテレビでたびたび見ました。

「カルビ」というのだからきっと牛肉の料理なのだろうと私は思いました。その頃の私は牛肉をなるべく食べないようにしていたので、自分には関係ないことなのだと思っていました。

Duolingoの韓国語を少しやってみて知ったのですが、「タッ(닭)」というのは「鶏」のことなのでした。そして「カルビ」は「ばら肉」のことなのだそうで……。

鶏肉料理だったとは……。一度くらい試してみればよかったと後悔しています。しかし、材料を揃えれば家で作るのも難しいものではないようです。

「おしょくじけん」


これは子供の頃の思い出です。

テレビからよく「おしょくじけん」という言葉が聞こえてきました。「おしょくじけん」で何かよくないことをした人たちがいるようなのです。

「おしょくじけん」ってデパートの食堂で渡される小さな紙のことだと私は思いました。あの「おしょくじけん」を使ってよくないことをしている人たちがいるなんて!と私は驚きました。

「汚職事件」と「お食事券」が別物であることを知ったのは、だいぶあとになってからのことでした。

「だいじん」

これも子供の頃の思い出です。私は四歳か五歳くらいだったかと思います。

私は祖母と一緒に街道を歩いていました。時々、道の両側に、大きな白い家があることに私は気づきました。

私は自分から話しかけることがめったにない子供でしたが、その時は珍しく祖母に話しかけたのでした。

私「おばあちゃん、あの白い大きなおうちはなあに?」
祖母「あれは『おくら』というのだよ」
私「おばあちゃんのおうちに、おくらはないねえ」
祖母「おくらがあるのは『おだいじん』のおうちだよ。うちはおだいじんではないから、おくらはないんだよ」

おだいじん? おだいじんってテレビに出ている背広を着たおじいさんたちのことだよね、あの人たちはこのあたりに住んでいるのか、と私は思いました。

「大尽」と「大臣」が別物であることを知ったのは、それからだいぶたってからのことでした。

他にも勘違いしていたことはたくさんあり、今に至るまで勘違いしたままのこともたくさんありそうです。本を読み、辞書を読み、人の話を聞いて、勘違いを正していきたいものだと思います。

ラベル:日本語
posted by ごー at 02:23| Comment(0) | 日本語 | 更新情報をチェックする

2023年08月05日

辞書を読む

YouTubeの「有隣堂しか知らない世界」(https://www.youtube.com/@Yurindo_YouTube)というチャンネルで「新明解国語辞典」が紹介されていたので見てみました。



有隣堂は横浜に本社がある書店チェーンで、私は一時期、新宿の小田急百貨店の10階にあった「STORY STORY」という名前のお店にほぼ毎週行ってました。本の並び方が独特で、雑貨売り場にはすてきなものがたくさんあって、とても楽しかったのを覚えています。

「新明解国語辞典」は2020年に第八版が出版され、新しい言葉も追加されているそうです。






「新明解国語辞典VS三省堂国語辞典の世界」という動画もあります。



辞書って楽しいものですね。

小型現代語辞書のさきがけ――『明解国語辞典』誕生から80年
https://dictionary.sanseido-publ.co.jp/topic/meikok80/

実は、私も新明解国語辞典を持っています。1996年3月8日に税込2500円(本体2427円)で購入したものです。あの頃は消費税が3パーセントだったんですね……。うちにあるのは第四版、第三十刷です。






アマゾンにあるレビューによると、語釈が面白いのは第四版の四刷までなのだそうです。

なぜ私がこの辞書を購入したのかと言いますと、1990年代半ばに『新解さんの謎』という本が流行し、それを読んだからなのでした。






うちにある「新明解国語辞典」の表紙には「金田一京助」の名前があります。最近、『日本文学のススメ(無料版)』という漫画を読んだのですが、そこに登場する金田一先生がいい人すぎてびっくりしました。






私は新明解を持ってはいるものの、あまり使ってはいませんでした。そこで、あらためてよく見てみることにしました。私のは第四版、第三十刷です。

有名な「恋愛」の語釈の中に「合体」という言葉が出てきます。そこで「合体」の項を見てみると……。

(前略)この辞書でのえんきょく表現。


とあります。この辞書内だけでの意味があるとは! いや、この言葉は『釣りバカ日誌』でも使われていますね。

勉強」のところを見てみます。冒頭に括弧入りで、

そうする事に抵抗を感じながらも、当面の学業や仕事などに身を入れる意


とあります。ということは、私の外国語の勉強は、勉強ではないのかな? なぜなら特に抵抗を感じてはいないので。

読書」を見てみます。

かなり独特な説明がされていて、最後に括弧入りで、

寝ころがって漫画本を見たり電車の中で週刊誌を読んだりすることは、勝義の読書には含まれない


と書かれています。これにはびっくり仰天しました。私の生活をのぞき見されているのかと、一瞬思ってしまいました……。といいますのも、一日中ごろごろしながら漫画を読んだ日とか、長時間電車に乗って週刊誌を読んだあとに、私はいつも「今日はたくさん読書をした!」と満足していたからです。

私はロシア語に興味があるので「イクラ」を見てみました。

[ロ ikra] 筋子を、一粒ずつ離した食品。カナッペに載せたりする。


食べ方が提案されている点が斬新だと思いました。それも、イクラ丼や軍艦巻きではなく「カナッペ」であるところに、この言葉は外来語なのであるということが強調されているように感じました(←そんなことを思うのは私だけかもしれませんが)。

前回、「エスカロープ」について書きましたが、(「エスカロープ」とは何ですか?https://kotobanobenkyo.seesaa.net/article/500223784.html)、新明解に「エスカロープ」はちゃんと掲載されていました。

[フ escalope] 薄切りの肉。

しかし、不思議なことに「餃子」がありません。「ラーメン」「肉饅」「餡饅」はあるのですが。「八宝菜」「麻婆豆腐」もありません。この辞書を作った人たちは、中華料理にはあまり興味がなかったのでしょうか?

辞書を眺めていたら、あっという間に二時間たっていました。知っているはずの言葉も、あらためて辞書で見てみると新しい発見があったりします。今後はもっと国語辞典を活用しようと思いました。
ラベル:日本語
posted by ごー at 07:57| Comment(0) | 日本語 | 更新情報をチェックする